SGJ通信

技術の導入と展開 ~戦後70年の出発に際して~

 今年は2015年、平成26年ですが、終戦後70年でもあります。昭和20年の終戦時には、私は、小学6年生で、戦争ごっこと勤労奉仕で過ごしていました。配給米で飢えを凌ぎ、自転車とリヤカーの時代に、アメリカでは一家に2台の自家用車を保有しているといわれ、想像出来ない生活水準の差でした。それが現在では、農村地帯では、一家に2台から3台の車は当たり前となっています。その間、アメリカを中心に先進国から各種の技術導入が行われました。特に、昭和30年から40年代はアメリカなどから高度の自動機械を輸入し、そのコピー機の拡大などで生産力が急速に拡大しました。そして、昭和60年代はコンピュータを活用した生産の自動化・コンピュータ化、すなわち、FA化CIM化が急速に普及しました。このように、自動化された効率的なシステムが、生産の海外移転などに対応するため、多品種小ロット生産の効率化などへと、生産形態の変化も進めましたが、日本の生産基盤は充実しました。

 

 このような生産形態の変化を進めながら、終戦当時は想像もできなかったアメリカを超える生活水準を実現することが出来ました。その過程を振り返ると、生産の自動化を実現するための生産技術に合わせ、品質管理やIE、コンピュータなどの管理技術の取入れを実施したイノベーションの効果があげられます。これらの自動化技術や品質管理、IE技術などの大部分の技術はアメリカで誕生し、発展してきました。そして、その技術はFA化、ISO、TPS(トヨタ生産方式)、TPMなどとしてわが国で熟成して標準化され、現在の日本の大企業の管理の基本として普及しています。 

 

  現在、繁栄している多くの大企業は、これらの管理技術を上手に活用しています。トヨタ生産方式は独自の改善方式と思われている向きもありますが、作業改善は「フォード方式」、改善方式は戦時中にアメリカで開発された「TWI」を基礎として、トヨタの実態に合うように永年かかって実用化されたシステムです。中小企業が新しい改善方式を取り入れる際には、これまで多くの企業が築いてくれた改善の基礎をしっかり身に着け、それを基礎に自社のシステムに適合するようにする必要があります。

 

強力な改善とエゴの力

  このたび石原慎太郎さんが「エゴの力」という本を出版されました。この本で引用されている事例から、物事を完遂させるためには、それを実行するトップの強いエゴの発揮と、そのエゴの実行に同調する協力者のあり方を改めて感じました。信長、秀吉、家康の例が面白い例です。3人とも戦国の乱世を終わらせたいとの思想は同一ですが、そのためには、まず、信長の強引なエゴの発揮が必要であり、その実行のために、家康は自分の子供を切腹させることまでして信長のエゴに同調しました。また、秀吉は、信長のエゴの発揮をとことん助けました。そして、秀吉、家康とも、自分の出番を察知すると、自分のエゴを発揮して、戦国の世を治めた大変良く出来た例です。

 

 エゴの狙いは一緒でも、その根底にある基本知識の共有化がなければ問題です。明治の日本の改革は「ヨーロッパに学ぶ」を基本としていたので、政権運営の主導者と共通基盤に立つ知識を持つ必要があったのです。明治維新の功労者の西郷隆盛は、ヨーロッパに渡航しなかったので、ヨーロッパ文明の取入れを中心とした明治政権と意見が合わず、自分のエゴを貫くことができませんでした。

 

 中小企業で似たような例が発生します。創業社長は自分の体験を活かして、会社の成長に向けエゴを発揮して会社運営を行っています。そこに、他社で経験を積んだ優秀な人が途中入社すると、創業社長のやっている内容が自分の理想と大幅に異なるので、自分の意見を社長に直接提案し、実行を強要します。そこで、社長と意見が衝突し、退社してしまう例が多くあります。会社を良くする気持ちが一緒なので、信長に対する秀吉と家康の例に学んだ対応をすればよいのにと思う場面によく出会います。

 

 また、大手企業が急激な改善を実施する際に、指導者が強力に改善を実行するが、組織全般に定着せず、一旦、後退し、その後、再実施し、成功している例が多く存在します。何はともあれ、物事を実行するにはトップの強い意思「エゴの力」が必要です。そしてそのエゴを確実に実行するには、トップを支援する同意者の養成が重要です。強力な改善を実行するときに考えておかねばならない事項です。

自分に限界を作らず、仕事を楽しむ心が道を開く

 このたび開催された日本IE協会全国大会で、23年間の主婦生活の後、44歳で弁当販売員として日本エンタプライズにパートで入社、専業主婦時代の経験を活かし、カリスマ駅弁販売員として頭角を現した三浦由紀江氏の講演がありました。三浦氏は、52歳で正社員、53歳で大宮営業所長。大宮営業所長1年目で駅弁売上高を5000万円、就任4年で売上高を1億1000万円アップさせるなど、大きな業績を上げました。

 

 三浦氏は、この実績の根底は、23年間の主婦時代の体験を活かし「仕事は楽しく、自分に限界を作らない」、「楽しむ心が、道を開く」そして 「人生すべて演技力、演出力」にあると言っています。

 

 三浦氏の接客の要点を紹介します。

 

 ・駅弁の販売は人を相手にする仕事であり、接客力が全ての基本

  「いらっしゃいませ」というあいさつと、お客様の好みを把握して売ること、この人から

  買いたいと思わせることが重要

 

 ・駅弁販売だから雄弁な人が必ずしも良いわけではなく、人の心に響く態度や言葉がでる人

  が必要

  あまりしゃべらない人、口下手な人、モソモソっと話して売る人、相手に話させるような

  人も重要

 

 ・販売員ひとりひとりが、その個性を、その人らしさを前面に出しながら接客することが

  大切

 

 ・仕事の基本のマニュアルは必要だが、顧客対応のマニュアルは必要なく、個人の持ち味を

  表現

 

 駅弁の販売は接客業の最先端であり、三浦氏の実績は「この人から買いたい」と思わせる自分の振る舞いを顧客の観点で意識することであるといっています。「大宮」「上野」それぞれのやり方があるが、その、いろいろの個性を持っている販売員の行動を指導するには、「自分が変われば、まわりが変わる」ということで、まず、自分の行動を変えることであり、その第一は毎日を楽しく、整理整頓をしっかりやることが重要であったと強調しておられました。

農作物収穫ロボットの研究発表会を聴講して

 このたび、精密工学会生産自動化専門委員会で開催した「農作物収穫ロボット」に関する発表会を聴講しました。7月に行われた千葉大学の植物工場見学と合わせ、農業のあり方に関する認識を深め、農業の自動化の必要性と、実現のための課題を探ることが出来ました。我が国は、農業人口の高齢化などもあり、食糧自給率は40%から向上できそうもない状況です。これを脱するためには、「儲かる農業」の実現に向けた多様な運営形態の対策が必要で、農業の産業化、活性化に向けた農水省の対応策が活発化しています。その一環として、栽培システム全体の効率化と、各種作業の自動化・ロボット化を含めた研究・開発が植物工場として進められています。千葉大学では人口光活用型、愛媛大学は太陽光活用型、大阪府立大学では、人口光・太陽光両面より研究・開発を進めています。

 

 農業生産の自動化では、生産現場の多様な環境変化にあわせ、植物の生育状況を把握することが必要であります。各種センサーを搭載した生育診断ユニットがハウス内を走行し、収穫ユニットで、果実を収穫することになります。キュウリなどは、1日の成長速度が速く、翌日になると長過ぎて半値になってしまうこともあるので、最盛期には、毎日、朝夕収穫する必要があります。また、労働力の大部分は収穫に集中するので、収穫作業省力化のためのロボットの開発が望まれます。

 

 現在、植物工場は、採算のとれるものを対象に拡大し、レタスなどの葉物類、トマト・キュウリ・イチゴなどを中心に推進されています。太陽光活用型を研究している愛媛大学では、かなり大規模な形で実用化し、愛媛大学と関連して植物工場を運営している150人規模の企業があります。また、キューピー、カゴメ、井関農機など、メーカーも参画してきています。農水省では「モデルハウス型植物工場の実証・展示・研修事業」として、全国6か所で植物工場の拠点を整備しました。

 

 植物工場のこれらの各種課題を克服し、植物工場が魅力ある農業として若者があこがれる産業となり、また、植物工場関連産業が有力な産業に育つことを期待します。

階層別人材教育で、素晴らしい改善活動を実施している工場見学記

  このたび、素晴らしい改善活動を実施している横浜ゴム三島工場を見学に行ってきました。この工場は、自動車用タイヤを毎日4万本生産している従業員900人あまりの工場です。この工場では15年程前にTPM優秀賞を受賞したが、10年程経過してみると、TPM活動を体験した人は半分程度になり、改善のレベルが低下しているのに気付き、改善活動を再開することにしたとのことです。これまでにISO9001/14001の認証、TPM優秀賞、自動車規格のISO16149の認証など、各種の受賞活動を体験しているので、今回はこれらの改善活動の成果を踏まえ、真に役立つ改善活動を目指したとのことです。

 

  今回の改善活動の重点を人材育成に置き、その目指す姿は「自ら気づき、行動できる人づくり」とし、継続的な活動を展開しています。人材教育は、作業者、リーダー、監督者の3グループに分け、それぞれに詳細な教育プログラムが作成され、教育が実施されています。作業者レベルでは、新入社員からリーダー候補まで、段階的に詳細な教育段階がプログラムされ、役づけ者の研修は、自ら考え、行動できる人材づくりとして、ものづくりの推進ができる人材づくりを目指しています。

 

 改善活動は、7つのムダ摘出の方式で問題を発掘するTPS(トヨタ生産方式) 、問題の解決を実行するTPM、階層別人材教育とサークル活動の3本柱で構成されています。TPMの改善活動は、TPMの基本である「自主保全の3ステップ」の実行に重点をおき、初期清掃、発生源困難箇所対策、仮基準書づくりの現場改善の基本を繰り返し実施しています。問題と改善の実行成果は53の各サークルがまとめ、各現場で成果を張り出し、また、毎月3サークルの全社発表で行われます。改善の基本としてのTPSとTPMの基本的技術をしっかり学習してそれを確実に実施し、その成果を上げるために「階層別人材教育」を組織化して独自性を発揮し、効率的に実行している点が素晴らしと感じました。

« 前ページへ 次ページへ »

カレンダー

2017年8月
« 7月    
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031  

カテゴリー

アーカイブ

ページの先頭へ